ニュース&トピックスNews & Topics
- HOME>
- ニュース&トピックス
ニュース&トピックス一覧
労務管理
2019.11.25インド労働法におけるワークマン/ノンワークマン
本稿では、労働問題を検討するにあたって重要な概念であるワークマン(Workman)の概念について解説します。
インドでは数多くの労働法が存在しますが、一部の労働法についてはとりわけワークマンとカテゴライズされる労働者についてのみ適用され、厚い権利保護が図られています。他方で、ワークマンに該当しない労働者はノンワークマンと呼ばれ、領域によっては労働法の保護を受けない場合があり、使用者と労働者との間で締結された雇用契約の内容がより重要な意味を持ちます。例えば、労働者の解雇について規定するIndustrial Dispute Act, 1947(以下「産業紛争法」)は、ワークマンについてのみ適用されるため、解雇の場面では、労働者がワークマンに該当するのか、それともノンワークマンに該当するのか検討・把握することが重要です。
では、どのような労働者がワークマンとして取り扱われるのでしょうか。ワークマンの定義は、産業紛争法2条(s)に以下のとおり規定されています。
“workman” means any person (including an apprentice) employed in any industry to do any manual, unskilled, skilled, technical, operational, clerical or supervisory work for hire or reward, whether the terms of employment be express or implied, and for the purposes of any proceeding under this Act in relation to an industrial dispute, includes any such person who has been dismissed, discharged or retrenched in connection with, or as a consequence of, that dispute, or whose dismissal, discharge or retrenchment has led to that dispute, but does not include any such person-
(i)who is subject to the Air Force Act, 1950 (45 of 1950), or the Army Act, 1950 (46 of 1950), or the Navy Act, 1957 ; or
(2)who is employed in the police service or as an officer or other employee of a prison, or
(3)who is employed mainly in a managerial or administrative capacity, or
(4)who, being employed in a supervisory capacity, draws wages exceeding ten thousand rupees per mensem or exercises, either by the nature of the duties attached to the office or by reason of the powers vested in him, functions mainly of a managerial nature.
非常に長い定義となっていますが、要点を抜き出し日本語に訳すと、以下の通りになります。
ワークマンとは、産業において雇用される手作業的、非熟練的・熟練的、技術的、運営的、事務的または監督的業務に従事する者(見習い工も含む)を意味するが以下のものを除く。
(i)空軍法、陸軍法又は海軍法の適用を受ける者
(ii)警察又は刑務所で雇用されている者
(iii)主に経営的又は管理的立場で雇用されている者
(iv)監督的立場で雇用されており、かつ、月額賃金が1万ルピーを超える又は職務の性質上もしくは付与された権限により主に経営的な役割を果たす者
以上のとおり、
原則:幅広い範囲の労働者がワークマンに該当する
例外:(i)~(iv)に該当する労働者はワークマンに該当しない
という形でワークマンの定義が規定されています。
通常の日系企業との関係では、管理・経営的立場にある者、または、監督的役割を果たし、かつ、月10,000ルピーを超える給与を受領している者はノンワークマンだが、それ以外は幅広くワークマンとして取り扱われると理解すれば良いでしょう。
管理・経営的立場の例としては、日本でいう管理職的立場の従業員が挙げられ、自らの裁量のもと他者に指示を出すに認定される傾向があります。また、監督的役割の例としては、工場のライン長のように、他者に指示を出しながらチームの監督をしているに認定される傾向があります。管理・経営的立場あるいは監督的役割を果たしているのか否かという点は、その従業員の肩書きによって判断されるわけではなく、当該従業員の役割や権限といった実態に即して判断されます。そのため、どのような場合に管理・経営的立場あるいは監督的役割が認められるかという判断はケースバイケースであり、また一義的な判断基準も存在しないため、労働法を専門とする弁護士をもってしても明確に判断できない場合があります。
ノンワークマンに該当することを前提に処分したにも関わらず、事後的に労働審判所にワークマンに該当すると判断された場合、当該処分が違法・無効となる可能性があるため、ワークマンに該当するか否か明確に判断できない場合は、念の為ワークマンに該当する前提で対応することが推奨されます。
以上、インド労働法上のワークマンの概念について解説しました。ご不明点やご関心事項がある場合、お問い合わせページまたは右下に設置されていますチャット相談からお気軽にご連絡ください。
お気軽にお問い合わせください。