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一般
2020.05.15インド景気刺激パッケージ/Economic Stimulus Packageの概要
インド政府は、2020年5月12日に、COVID-19の影響による経済の落ち込みに対抗すべく、20兆ルピーの景気刺激パッケージ(Economic Stimulus Package)を発表しました。本稿では、同パッケージのうち、日系企業に影響のありうる点について解説します。
1. 倒産申立基準の変更
インドでは、2016年に倒産法の統一法典であるInsolvency and Bankrptcy Code, 2016(「インド倒産法」)が導入されましたが、これまでその手続開始申立の基準は、10万ルピーの不履行とされていました。同パッケージによって、従前10万ルピーとされていた基準が1千万ルピーまで引き上げられました。今後は1千万ルピーという比較的高額な債務不履行がある場合のみ倒産手続の利用が可能となります。なお、インド倒産法は、純粋な倒産案件はもとより、倒産手続の申立を一種の脅しとすることで債権回収を実現する手段としても利用されていました。今後は、1千万ルピーという高額な債務についてのみ、倒産手続申立を利用した債権回収が機能することになります。
2. 従業員準備基金負担割合の引き下げ
インドの社会保障に関しては、主にEmployees’ Provident Funds and Miscellaneous Provision Act, 1952(「従業員準備基金および雑則法」)によって規律されており、 基本給、補填手当(Dearness Allowance)、残留手当(Retention Allowance)の12%を従業員が、12%を使用者 がそれぞれ拠出するものとされています。同パッケージでは、5月、6月、7月拠出に関して、従業員・使用者双方の負担割合を10%に引き下げるものとされました。
3. 会社法規制の緩和
会社法の規定するCSRの届出、定時株主総会の適時開催、法定事項のファイリングといった一定のコンプライアンス事項が不処罰化されました。また、一次的にオンラインで問題の解決を図れるInternal Adjudicaton Mechanism(IAM)の対象とされるCompoundable Offence (一定のフィーを支払うことでペナルティを回避できる違反事項)の対象が従前の18から58に拡大されました。
4. 所得税法関連規定の改定
2020年5月14日から2021年3月31日までの期間、一定のTDSおよびTCS税率が、現在のレートから25%引き下げられました。なお、PANやAadhaar番号の不提出を理由に高税率が課されるケースについては当該引き下げが適用されないことが表明されております。また、FY2019-20の確定申告期限が、2020年11月30日まで延長されるとともに、税務監査の期限が2020年10月31日まで延長されました。さらに、利息・ペナルティを支払うことなく税額を争うことのできる税務紛争解決スキームであるVivad se Vishwas Schemeの有効期限が12月31日まで延長されております。
5. 中小企業の定義変更
Micro, Small and Medium Enterprises (MSMEs/中小企業)の定義が、以下の通り変更されました。
Investment | Turnover | |
Micro | INR 10,000,000未満 | INR 50,000,000未満 |
Small | INR 100,000,000未満 | INR 500,000,000未満 |
Medium | INR 200,000,000未満 | INR 1,000,000,000未満 |
中小企業該当要件を緩和することにより、優遇の対象となる企業の範囲を拡大することが、当該定義変更の目的となっています。
以上2020年5月12日にインド政府が公表した景気刺激パッケージのうち、日系企業に影響のありうる点について解説しました。ご不明点やご関心事項がある場合、お問い合わせページまたは右下に設置されていますチャット相談からお気軽にご連絡ください。
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