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一般
2020.06.27COVID-19により賃貸不動産が利用できない場合の賃料交渉
インドでは、COVID-19の流行が拡大の一途を辿っており、賃貸不動産の利用も含め日系企業のビジネスオペレーションも多くの側面で影響を受けています。本稿では、インドCOVID-19流行下において賃貸不動産が利用できない場合の賃料交渉について解説します。
1. 賃料減額が問題になりうるケース
新型コロナウィルス影響下で賃料の減額交渉が問題となりうる物件のタイプとして、オフィス物件と居住用物件の二つが考えられます。
まず、オフィス物件に関してですが、インドでは2020年3月25日よりロックダウンが敢行され、長期にわたりオフィスが使用できないという事態が続きました。このように、政府の命令によりオフィスの利用が妨げられるケースについては、賃料減額交渉の余地があると言えます。ロックダウン緩和後も新型コロナウィルスの感染者数は増加の一途を辿っており、再度ロックダウンが実行された場合、あるいは特定のビルの使用を政府が禁止した場合などは賃料交渉を検討する実益があると言えます。
次に、居住用物件に関してですが、駐在員を避難させるため帰国させ、その住居不動産を利用できないケースをよく耳にします。このようなケースについては、オフィス物件の場合と比較して交渉材料に乏しいケースが多いものの、貸主が減額に応じるケースがないわけではありません。
2. 賃料減額の交渉材料となりうる法的事項
不動産の貸主・借主の法律関係は、賃貸借契約書(インドでは通常Lease Deedと表記)によって規律されます。インドの標準的な賃貸借契約書には、賃料減額条項が含まれないことが一般的ですが、不可抗力(Force Majeure)条項や契約の解除/更新(Termination/Renewal)条項を交渉材料として、賃料の減額を求めることが考えられます。
(1) 不可抗力条項に基づく減額交渉
不可抗力条項とは、地震や戦争など、契約当事者の支配が及ばない事由を原因として債務を履行できない場合に、契約当事者をその負担する義務や違反から免責するための条項です。
不可抗力条項の内容は個々の賃貸借契約毎に異なりますが、仮にその不可抗力条項が新型コロナウィルスに基づくロックダウンを不可抗力として取り扱う場合、貸主が賃料の減額交渉に応じる可能性が高まります。
インド賃貸借契約の不可抗力条項の例として、以下のような条項が挙げられます。
Force Majeure: If the said Demised Premises shall at any time during the term of this Lease Deed be destroyed or damaged or unusable due to fire, flooding, storm, typhoon defective construction white ants, earthquake, subsidence of the ground or any natural calamity beyond the control of the Lessor or any governmental order, the rent hereby to the extent and duration of the damage sustained shall be suspended until the said Demised Premises shall again be rendered fit for occupation and use.
上記の条項例では、賃貸期間中に火事、洪水といった貸主の支配を超えた自然災害や政府の命令によって賃貸不動産が利用不可となった場合、賃貸不動産が占有・使用可能な状態に戻るまで賃料の支払いを停止するものとされています。つまり、不可抗力により不動産を使用できない場合、賃料を支払う必要がなくなるのです。
オフィス物件がロックダウンや政府の命令によって使用不可となった場合、仮に賃貸借契約の不可抗力条項が上記のようなものであれば、新型コロナウィルスがnatural calamity (自然災害)に、ロックダウン命令がgovernmental order (政府命令)にそれぞれ該当し不可抗力に該当するから賃料の支払いは停止されるべきだと主張しながら、賃料減額交渉を行うことが可能です(なおインド財務省が新型コロナウィルスはnatural calamityに該当するという立場を採用している。)。
他方、駐在員を帰国させた結果、居住用物件を利用できないケースでは、あくまで居住用物件自体は利用できるため(会社の都合で利用を放棄しているに過ぎない)、利用不可(unusable)ということは難しく、不可抗力条項を交渉材料とすることは難しいと言えます。
なお、不可抗力条項が適用される場合、法的にはそもそも賃料支払い義務が発生しないことになりますが、賃料交渉の結果、50%程度の減額で収まるケースが多いです。
(2) 契約解除・不更新を背景とする減額交渉
不可抗力条項の規定内容が自社に有利な場合、これを主軸に交渉することになりますが、仮に不可抗力条項の援用が難しい場合、契約の解除や不更新を背景に賃料の減額を求めることなどが考えられます。
COVID-19状況下では、借主としては会社としてはオフィスの広さが過剰であり、あるいは駐在員を帰国させたため居住不動産を一切利用できなといった場面が発生し得ます。他方、貸主としても仮に契約が解除された場合に次の賃借人を探すことは容易ではありません。賃貸借契約の更新時期や契約解除に何ヶ月の予告通知が必要であるか確認し、その期間が短いのであれば、これらの事情を踏まえて賃料交渉を実施すれば、減額に成功する可能性があると言えます。
以上COVID-19により賃貸不動産が利用できない場合の賃料交渉について解説しました。ご不明点やご関心事項がある場合、お問い合わせページまたは右下に設置されていますチャット相談からお気軽にご連絡ください。
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