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2020.09.21インドにおける製造物責任
インドにおける製造物責任は、これまで1986年に成立したConsumer Protection Act, 1986(「旧消費者保護法」又は「旧法」)によって規律されていましたが、新法であるThe Consumer Protection Act, 2019 (「新消費者保護法」又は「新法」)では、新たに独立した章として”Product Liability ”、つまり製造物責任の項目を設けることで、製造物責任に関して特別な規律を導入しました。
本稿では新消費者保護法で新たに導入された製造物責任の概要について解説します。
1製造物責任アクション
新消費者保護法は、”Product Liability Action”(「製造物責任アクション」)という新たな概念を導入することで、インドにおける製造物責任を規律しています。製造物責任アクションとは、ある者によって地域コミッション、州コミッションまたはナショナルコミッションに対して申し立てられた、その者に発生した損害(harm)の補償に関する苦情と定義されます。そして、製造物責任との関係で、損害(harm)とは、(i)当該製品以外の資産に対する損傷、(ii)私的負傷、疾病または死亡、(iii)私的負傷、疾病または死亡に伴う精神的苦痛または情緒上の苦悩又は(iv)配偶者権の損失又は(i)~(iii)に起因する損失を含むが、製品それ自体の損失、ワランティー条件に違反した結果発生した資産の損失又は商業的・経済的損失は含まれないと定義されます。損害(harm)の範囲は当該製品以外の資産一般に対する損失で足りるなど幅広く定義されているため、製造物責任を問われるケースが今後増える可能性もありうると言えます。
2 申立人
製造物責任を申し立てることができるのは、新消費者保護法上の申立人(complainant)に限定されます。新消費者保護法上の申立人の範囲についてはこちらを参照ください。
3 製造物責任が及ぶものの範囲
また、新消費者保護法は、製造物責任アクションを取りうる相手方とその場面について以下のとおり規定しています(新法84条から86条)。
製造業者(アッセンブラーや自社のマークを付したものも含む):
(a)製品に製造欠陥がある場合
(b)製品に設計上の欠陥がある場合
(c)製造仕様書の逸脱がある場合
(d)製品が明記されたワランティーに適合していない場合
(e)製品に損害発生を防止するために正しい利用のための指示書きや不適切な利用の警告が付されない場合
製品サービスプロバイダー:
(a)提供されたサービスが、適用される法律や契約等の観点から要求されるパフォーマンスの質、性質又は方法として、失敗、不完全、不十分又は不適切な場合。
(b)作為若しくは不作為又は過失若しくは故意により損害の原因となった情報を提供しない場合
(c)損害の発生を防止するための適切な指示又は警告を発しない場合
(d)サービスが明記されたワランティー又は契約の条件に合致しない場合
製品販売者:
(a)損害を発生させた製品の設計、試験、製造、梱包、ラベリングに対して実質的な支配を及ぼした場合
(b)製品に変更・修正を加え、このような変更・修正が損害を発生させた実質的な要因となった場合
(c) 製造業者による明示的ワランティーとは別に製品の明示的なワランティーを行なった場合であって、その製品が製品販売者による明示的ワランティーに合致せず損害を発生させた場合
(d)製品が販売された場合で、かつ、その製品の製造業者が特定できない場合又は特定可能であっても、サービスの通知・プロセス・保証の影響が及ばない場合又はインドの法律が適用されない場合又は命令が執行できない場合
(e)製品の組み立て、検査、メンテナンスに対する合理的なケアを怠った場合又は製品を販売するにあたって製造業者による製品の危険や適切な使用法に関する警告や指示の伝達を怠り、これが直接の原因となり損害が引き起こされた場合
製造物責任は、製造業者はもとより、販売者や製品サービスプロバイダーに対しても発生することが想定されており、日系企業に対する影響も大きいことが予想されます。自社のビジネスモデルに照らし、どのような場合に、製造物責任を負担しうるのか検討することが推奨されます。
以上インドにおける製造物責任について解説しました。ご不明点やご関心事項がある場合、お問い合わせページまたは右下に設置されていますチャット相談からお気軽にご連絡ください。
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